やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 ラウル殿下とマティアスは驚きのためか、まったく言葉を発しない。

 話しつくしたしん、とした沈黙の中、私は二人を見比べた。

 ラウル殿下は鋭く私を見て、マティアスは目を見開いて、ただただ私の話に驚いているようだった。

「……それが、本当である証拠は」

 ここまで言ってそれが間違いではないと思っているはずなのに、用心深くそう述べたラウル殿下の言葉に私は頷いた。

「ラウル殿下が魔法使いの元に、眠ったままメイヴィス様をお連れすることを知っています。もうそれはしてしまった後かもしれませんが、メイヴィス様の中にあった恋は幸せな記憶でした。あの頃、傷つき疲れた切った私も、思わず目を奪われてしまう程」

「ニーナ……」

 マティアスがためらいがちに私の名を呼び、私は彼に目を合わせて微笑んだ。

「私は二人が、私とメイヴィス様にしてくれたこと、知っています。もう、何も知らないままではない。どうやってでも、貴方たち二人を助けたい……お願いします。協力させてください」

 私は立ち上がって手をぎゅっと握り締めたまま、頭を下げた。


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