やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 ……一年後、私をあっさりと捨ててしまう癖に。

 暗い思考に陥りそうな頭を、ふるふると横に振って、お茶の準備に専念する……仕事は大事。

 だって、恋人は裏切るけど、仕事は裏切らないもの。

「……ねえ……本当に、格好良い方たちね。近衛騎士は、外見で選ばれると聞いたことがあるわ」

 準備をしながら興奮したように、セイラは私に小声で囁いた。

「……そうかしら?」

「まあっ……ニーナったら、そんなことを言って。私たちが近衛騎士と出会うなんて、奇跡に近いのに……ねえ、どちらが好み?」

 ピンクの小花柄のドレスを着たセイラは、手早く準備をしながら微笑んだ。

「……私は黒髪のハサウェイ様かな」

「あらっ。そうなの? てっきり……」

 セイラは口を押さえて驚いたようにすると、メイヴィス様の質問に答えているマティアスをさっと見た。

「ニーナは……グランデ様かと思ったわ。いつも聞いている、あなたの理想にぴったりだと思うし」

 不思議そうなセイラは、何も悪くない。その通りだからだ。けど、胸がズキンと痛んだ。

 今更、痛むはずのない胸が痛む。

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