やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 困惑したように正面に居る私とマティアスを見比べる。そうよね、真相を知ったあの時までそのつもりだったし、メイヴィス様が困惑されるのもわかる。

「あの……きっと、信じてもらえないかもしれないんですけど、私の話を聞いてもらえますか?」

 真剣な私の言葉に、メイヴィス様は戸惑い目を瞬かせながらも頷いた。

 最初から説明する、私が失恋をして真相を知り、今ここに居る理由。メイヴィス様は何も言わずに真剣な顔をして聞き入ってくれた。

 時折、隣のラウル殿下と目を合わせながら。

 私の話が終わり、しんと静まり返った部屋の中、やがてメイヴィス様の声が響いた。

「なんてこと……」

 彼女の声が震えている。隣のラウル殿下が心配をして手を差し出した、その時だった。

 パンっと音がしてメイヴィス様はラウル殿下の伸ばした手を払う。

「よくそんなことが出来たのね、ラウル……ううん。今はそう、そうするつもりだった……ってことね。もしもニーナが居なかったなら」

「メイヴィス」

 ラウル殿下は手を払われたまま、慌てた表情で固まっている。

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