やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 私の言葉に、ざわっと部屋がどよめく。

「……どういうことだ。何故、それを言わなかった!?」

 シメオン兄さんが珍しく声を荒げたけれど、カイン様が手でそれを制した。

「呪いのことは、マティアスがミレイユ嬢に言ったのか?」

「いいえ……もしかしたら、彼女が誘拐犯だとしたら、誘拐された時に、悪魔の紋様を見られたのかもしれませんが……」

 婚約をしそうになっていた相手にまさか誘拐されたとは思っていなかったのか、マティアスは困惑したように俯いた。

「私が聞いた時に、何も言わなかったのは、どうして?」

「君に知られたと思って、動揺してたんだ。だが、ミレイユが、なぜ僕らを誘拐したんだ?」

「……近衛騎士二人を手玉に取って、良い気なもの、と……言われたけれど、関係あるかしら」

 皆、私の話を聞いて、絶句したみたいに何も言わない。女同士の言い争いに驚いたのかもしれない。

 シメオン兄さんが、声を震わせながら言った。

「そんなことで、妹のニーナを誘拐したのか? ……許せない」

「シメオン兄さん、落ち着け。グランデ家の方々の前だ」

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