やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
「魔力の素として相性が良いのが、乙女の恋の記憶でね。だからあれ程にまで多くの恋の記憶を集めているんだよ」

 部屋の中にずらりと並んでいた色とりどりのあれは……はっとして口元を押さえた。彼の部屋の棚に並べられていた記憶、あれはそういうこと?

「……あんなにもたくさんあるのに、まだ集めるの?」

「相性があるんだよ。この魔法には、こういった記憶が効果が増すという風にそれぞれ効果が違う」

「私の忘れた記憶では、一年前に帰るのが精一杯であったように?」

「そうだが、君の記憶と時間操作は馴染みが良かった、まだ残りがあるよ……君の恋人の体を、悪魔の契約前の時に返すことも出来る」

「……悪魔と契約する前に? そんな都合の良いことが……」

「出来るさ。私を誰だと思っている?」

 すげなく聞き返され、何故か彼は不思議な力で体を震わせた。

 魔力を持たない私だって、そんな彼から圧倒的な力を感じた。

「ラウル殿下の体も……戻して欲しい」

「承知した。他には何か望むことはあるか?」

 あっさり答えた魔法使いをじっと見つめて言った。

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