やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
間違いであってほしいそう思いながら呟いた私に、セイラは仲が良かった今までが信じられないくらいに酷薄な表情を浮かべた。
「あら! 気が付いたの? 早かったのね」
「……やっぱり、貴方がラウル殿下とマティアスに呪いをかけたのね、どうして?」
「気に入らなかったからよ。私だけ、幸せになれないなんておかしいでしょう?」
「……セイラ!?」
メイヴィス様は、私の後ろから声を上げた。
「メイヴィス様……あなたも大嫌いよ。すべてを持っていて、尚も幸せになるなんて。許せない」
セイラはサッと窓の方へと後ずさる。
メイヴィス様の部屋の扉には、もう騒ぎを聞きつけてきた使用人達が集まって来ていた。
メイヴィス様の警護担当の騎士も、今まで何の問題もないと思っていた同僚のいきなりの豹変に戸惑っているようだ。
「一番嫌いなのは、ニーナ。貴方よ」
「セイラ」
言いようが悲しくて、私は眉を寄せた。勘違いしてはいけない。この人はもう、友達だった人だ。
「私のような商家の娘は行儀見習いを経て、お金持ちの後家に収まるのが通例。あなただって、そうだと思っていたのに」