やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様

　私は身近な持ち物だけを入れた小さなトランクだけ持ってデッキに出た。そろそろ、久しぶりに帰って来たセレンディアだ。近づく陸地に胸が騒ぐ。

　背の高いヴァレール兄さんの後を追って、数多くの出迎えの人達の波を抜ける。

　その中に、目を引く金髪を見つけた。見知らぬ彼は、何故か私を知っているかのように微笑む。その青い目にどこか見覚えがあるような気がしたけれど、思い出せない。

「……来ていたのか」

「ええ。勿論です。一刻も早くお会いしたくて」

　ヴァレール兄さんは辺りでも、一際目立つ金髪のその人に向かって歩いた。私はどこか甘くて優しい眼差しに恥ずかしくなって俯いた。

「……ニーナ、こちらは……」

「はじめまして、ニーナ。君の噂は聞いている。僕はマティアス・グランデだよ。お見知りおきを」

　にこりと微笑んだその笑顔になぜか懐かしくなって、目を細めた。

「はじめまして。ニーナ・クルーガーです。兄のお知り合いですか？」

　ねえ、もう一回はじめましょう。貴方となら何回も恋に落ちるわ。

　幾度出会っても、きっと恋に落ちていく。

　
fin