やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 私は近づいてくるマティアスを避けるようにして、後ろに後ずさった。

 追いかけてくるように、微笑む彼も距離を詰める。

 ……しまった。マティアスは女の子に嫌われることに慣れてないから、逆に興味を引いてしまったかもしれない。

 ……でもここで好意的な反応をした前回も、結局はそういう事になってしまった訳で。

 どうしたら、正解なの?

「どうぞ、ご勝手に」

 ため息をつきながら、私は言った。

 ここで何をどう言ったところで、彼の興味を引くことは変わらないみたいだった。

「僕の事は、どうかマティアスと呼んで。ニーナ」

「……マティアス様。仕事中なので、こういうことをされると困ります」

 出来るだけ冷たく突き放すつもりで、楽しそうな青い瞳をじっと見つめた。

 この目に見つめられるのが、とても好きだったことがあったことを思い出して。

 そこまで考えて……はっと、息を吐いた。私は何をしているんだろう? また繰り返すの? また傷つくの?

 また、目の前のこの人に捨てられるの?

「そうだね。残念ながら、僕も同じく仕事中だ」

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