やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様

06 思わぬ人

「やあ、ニーナ」

 待ち合わせの場所で所在なく立つジャンポールの隣で、にこにこと機嫌よくマティアスは微笑んだ。こういう展開をなんとなく予想していた私は、曖昧に微笑む。

 ジャンポールからの提案で二人だと緊張してしまうからと前置きがあった上で、私はセイラ、ジャンポールは仲の良い同僚を誘った。

 そう、ジャンポールはよりにもよって、マティアスを選んでいた。

 マティアスは話し上手だし、人当たりが良い。こういう時には最適な人材なのかもしれない。

 ジャンポールは口下手だし女慣れはしていなさそうで、二人きりだと緊張すると言っていたのは、確かに本当だろう。

 だから、彼が連れてくる候補と言ったらマティアスが筆頭だろうと思った。

 私は事前に確認はした。それってマティアスではないのか、と。

 けれど、ジャンポールは違うと言った……言ったはずだった。

 私は張り付いた笑顔を、ジャンポールに向けた。ジャンポールは申し訳なさそうに私に近づき耳打ちをした。

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