やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 ……すぐに、見つけられるはずだ。

 程なく私は、棚に置かれてある一際美しいあのピンク色の液体が入った瓶を見つけた。

「……メイヴィス・クロムウェル? メイヴィスお嬢様の記憶なの? そんな…」

 私は震える手で、小さな白い紙を持ち上げた。

 ……ということは、この記憶を忘れさせたのはラウル王子? メイヴィス様が恋しているのはあの人で、死にかけているのもあの人だったということになる。

 ……どうして。

 この前お屋敷にいらしてお会いした時には、とても健康そうに見えた。その先、なにかの要因で、瀕死になるなんて……。

 背中にぞっとしたものが走って行った。

 魔法使いの言葉そのままなら、あの王子様は、私が何もしなければ死んでしまうということ?

 ……どうして。王族たる彼に予想される死は、いくつかの選択肢しか見つからない。

 健康そうに見えるけれど、病気。

 もしかして、政敵に狙われて暗殺?

 いいえ。突如として起きた戦争での戦死?

 わからない。こんなことしか、思い浮かばない自分の想像力が恨めしい。

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