やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様

07 食事の席で

今の段階でひとつだけ、はっきりとしていることがある。

 このまま、私が何もせずに流されたら、きっと、また同じことを繰り返す。

 けれど、やり直す前には、ラウル王子はまだ亡くなっていない。

 そして、メイヴィス様と婚約も結んだままだったはずだ……ということは、あの記憶は私があの小屋へと訪れる直前にら注がれたということになる。

 あの時、ラウル殿下には自身の死期を悟るようなことがあったということだ。だからこそ、メイヴィス様が悲しまぬように、自分への恋心を忘れさせた。

 権力を持つ正妃と仲が悪いからって、ただそれだけで殺されるようなことなのかしら……。

 とにかく、今の段階では情報が少なすぎて、方法がまとまらない。

 ここは、背に腹はかえられない。関係を深めたくなくても、第二王子ラウル様の近衛騎士のあの二人から情報を得ようと決意をした。

「あら……ハサウェイ様と、出掛けるの?」

 私から話を聞いたセイラは、驚いて大きな黒い目を見張った。

 貧乏貴族の娘の私とは違って、行儀見習いで働いている大きな商会の娘であるセイラは、休日は部屋で静かに過ごすことが多い。

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