やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 ジャンポールは、幼い頃からラウル王子の傍に居たのかもしれない。いつも澄ました顔で美形の王子様を思い出して、もう一度笑ってしまう。

「やあ、楽しそうだ。ニーナ、ジャンポール」

 私はぽかんとした、間抜けな顔になってしまっていると思う。

 向かいに座るジャンポールも一緒で、心底驚いたって表情をしていた。

「……マティアス」

 光を受けて輝く金髪も眩しいマティアスは、きらきらしい笑顔でにっこり微笑んで言った。

「なんだか、偶然だね。相席しても良いかな?」

 店員の持って来た椅子に座ったマティアスは、にこにこと私たち二人をわかるがわるに見た。

「随分と、楽しそうにしていたね……何を話してた?」

 優しそうな穏やかな口調だけど、有無を言わせないというような目になんだか私は緊張した。

 私はマティアスと付き合っている訳でもないから、緊張する必要なんて、何もないんだけど……。

「……ラウル殿下の昔話だ。おい。お前はどうして、こんなところに居るんだ」

 後半部分を無視して、マティアスは言った。

「ラウル殿下の? ……昔話?」

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