やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 スタスタとマティアスを置いていくように速足で歩き出すと、人とぶつかりそうになってしまうのを、彼が手を引いて止めてくれた。

「あ、ありがとう」

「気分悪いというのは、嘘だろう?」

 握り締めた手の体温が熱い。そうだ。いつも思っていたけれど、マティアスは体温が高いんだよね。

「……だとしたら、何?」

「君とまだ、一緒に居たい」

 真摯な青い目に、その場しのぎの嘘を、そのままつき続けることは私には出来なかった。

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