やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 まるで私を傷つけたなんて、絶対に許せないとでも言いたげに。

 彼はそれが他でもない自分のことだとわかったら、どうするつもりだろうか?

 ……どうもしないわ。付き合っていた私の事も、一切情を見せずに切り捨てた人だもの。

 きっと、このマティアスだって、同じことだ。

「違うわ。私……誰とも、付き合ったことないの」

 好きになりすぎてしまったマティアスが私の一番目の彼氏だから、あんなにも傷ついたのかもしれない。

 もっと、経験を積んでいたら、ただの失恋だと流すことも出来たのだろうか。

 失恋の後、少し落ち着けた今の私には、もうわからなくなっていた。

「別に僕は君が、誰とも恋をしたことがないことが良いことだとは思っていない。今、この時に君が誰とも付き合ってなくて、誰と話そうが自由の身であることが嬉しいんだ」

「そう」

 歩き出しながら素っ気なく言った私に、マティアスは素早く横に並んで歩きながら言った。

「君は本当に、不思議な人だね」

 私は歩きながら、マティアスの顔を見上げた。

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