やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 どうしてか私を気に入り、付き合い始めると、それまでが嘘のように遊ぶのをやめてしまったと、彼の同僚が言っていた。

 だから、君にはきっと本気なんだよって言ってくれた。

 ……結局、マティアスは、私にも本気じゃなかったけれど。

「お友達としてなら」

 ラウル殿下の情報収集は、私も続けなければならない。会うことになるのなら、その関係に名前がついていた方が良い。

「……どういう友達?」

「普通のお友達。それ以外に、何か意味があるの?」

 私が問いかけると、マティアスははっとして口に手を置いた。

 どういう反応なのかしら?

「すまない。それで構わないよ。君に会えるなら。手紙も返してくれると嬉しい……ジャンポールに、書いたみたいにね」

 面白くなさそうな顔で、マティアスは呟いた。

 ジャンポールに手紙を書いたことを、何故知っているのかしら? ジャンポールはそんなことを、無意味に吹聴するタイプに見えないし。

「……分かったわ。もう無視しない。手紙も返事するわ、それで良い?」

「君はジャンポールのことを、どう思っている?」

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