やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 クルーガー男爵と呼ばれている私の父は、お人よしで事業の経営が下手な……まるで見本のような、駄目な貴族だった。

 私の二人の兄、シメオンとヴァレールは、それを反面教師にして抜け目がないというか、金銭的な問題に関してはシビアだ。

 妹の私にもお行儀見習いという、体の良い出稼ぎの道を見つけてきたのも、事業に成功した下の兄ヴァレール。

 ヴァレールの立ち上げた事業は見事に成功したとは聞いたけれど、私が公爵家で業務の引継ぎをしている間に実家の改装や内装の工事があったらしい。

 産まれ育った実家なのに、実家ではないような……どこか他人の家を見ている気持ちで、帰ってきたばかりの私は、クルーガー男爵家を見上げた。

「おかえり……ニーナ」

「シメオン兄さん。ただいま。どこか余所の……お金のあるお宅にまぎれこんでしまったのかと思ったわ」

 背の高い兄に抱きついて、久しぶりの抱擁をした。

「ヴァレールが、体裁は早めに整えておくに越したことはないと言い出したんだ。あいつが成功して、すぐに改装工事を発注したんだ」

「まあ……素晴らしい出来だけど、これは幾らかかったの?」

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