やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 私は見慣れない豪華なクルーガー男爵邸に、大きくため息をついた。

 今まで貧乏貴族として質素な生活を送っていたせいか、豪華な内装に慣れなくて、居心地が悪い。

 今までに勤めていたクロムウェル公爵家も、あくまで働く場所として見ていたけど……今、この場所は引けを取らない豪華さだ。

「そんな額が些少に思える程、ヴァレールは稼いだんだよ。お前の持参金だって、豪華にしてやれる。母上譲りの美貌で社交界で良い男を捕まえれば、何処にだって、望むところに嫁に行けるぞ」

 シメオン兄さんは、ヴァレール兄さんの事業の成功がとても誇らしいようだ。

 私は父にでどこかのんびりとした顔を持つシメオン兄さんを見つめた。

 嫡男のシメオン兄さんは、妹の私に何もしてやれないと気に病んでいたこともある。

 十分な持参金を妹に持たせることが出来る、という現在がとても嬉しいのだと思う。

「ニーナ。帰ったか」

「ヴァレール兄さん」

 シメオン兄さんはお人よしの父に似ているけれど、ヴァレール兄さんは若い頃、社交界の妖精と呼ばれた母の血を受け継ぎ、私と同じ黒髪と紫色の切れ長の目を持つ男前だ。

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