やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
「ならば、この妹はどうだ。わが妹ながら、美しく気立ても良いし、教育も行き届いている」

「……願ってもないことですが」

 ジャンポールは、私の顔をちらっと見た。

 片手を口に当てて、気まずそうだ。知り合いの女の子とただ踊っただけなのに、迷惑でしかないわよね。

「兄さん、もういい加減にして。ジャンポール様も、お仕事中だから」

 私はジャンポールを急かすようにして、背中を押した。彼も短く挨拶を交わすと、颯爽と去っていった。

「お前……社交界デビューの意味を知っているか? 求婚者を募って、より良い縁談を纏めるためだぞ」

「だからと言って……あんなにまで、縁談について明け透けに言うなんて。妹が恥ずかしいです」

「貴族的なのは、まだるっこしいだろう。婚約者のいない将来有望な近衛騎士を、ここで逃す手はない」

「でも……ジャンポール様は」

「心配するな。あの男がお前に気があるのは、ただ踊っているところを見ていても良く分かった」

 それを聞いて、私は頬にカッと熱が集まるのを感じた。ヴァレール兄さんは得意げな顔だ。

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