やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 私の真っすぐな視線を迎え撃つ彼は、興味深そうにして私を見つめ返した。

「……君は、とても不思議だね。あんなに美形で将来有望の騎士達に言い寄られても浮ついたところがない……まるで、興味が全くないみたいだ」

「それだけの理由で……すべての令嬢が意のままに動くと思ったら、大間違いですよ。殿下」

 にっこりと微笑み合い、私たちはダンス終わりの礼をした。ラウル殿下はまだ何か言いたげだったけど、私は兄にエスコートされて退出の時間だ。

「第二王子と何を話してたんだ?」

 私が馬車に乗り込むなり、ヴァレール兄さんは言った。

 向かいに座ると、なんだか近寄ると香水の匂いがきつい。強めにつけていた女性と、ダンスしたのかしら。

「婚約者メイヴィス様のことよ。お二人はとても仲が良いから」

 さらっと嘘をついた私に、ヴァレール兄さんは鼻白む。

「なんだ、第二王子妃も悪くないと思ったが」

 いきなり爆弾発言をした向かい席に座る兄に、私は向き直って言った。

「何を言ってるの。兄さん。ラウル殿下には、婚約者メイヴィス様がいらっしゃるじゃない」

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