やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
12 背中
「……ニーナ。大丈夫か」
問いに答えることも出来なくて、げぼげぼと水を吐き出す。
肺がひりついて痛い。
川へと落ちた時に、大量の水が体内に入って来てしまっていたのだろう。
私は泳げないし、これまでだって、泳いだことも一度もなかった。
ひとしきり水を吐き出す間、優しく背中を撫でてくれた人を見た。
「あなたが……助けてくれたのね。ありがとう…」
濃紺の騎士服がすっかりびしょ濡れになってしまっているジャンポールは、心配そうに顔を歪ませた。
「良かった…」
彼は冷えきってしまった私の身体を、優しくそっと抱きしめた。
周囲を見やると、ここは、真っ暗な森の中だ。
遠くから、狼の遠吠えのようなものも聞こえる。流されて人里離れたところにまで来てしまっていたようだった。
命が助かったと落ち着いてしまうと、麻痺していた感覚を思い出し寒さを急に感じた。
ガタガタと震える歯の根を、自分では止めることは出来ない。
冷たい水に濡れた庶民服は、肌に張り付き、体温を奪っていた。冷たい風もやんでいるとはいえない。
問いに答えることも出来なくて、げぼげぼと水を吐き出す。
肺がひりついて痛い。
川へと落ちた時に、大量の水が体内に入って来てしまっていたのだろう。
私は泳げないし、これまでだって、泳いだことも一度もなかった。
ひとしきり水を吐き出す間、優しく背中を撫でてくれた人を見た。
「あなたが……助けてくれたのね。ありがとう…」
濃紺の騎士服がすっかりびしょ濡れになってしまっているジャンポールは、心配そうに顔を歪ませた。
「良かった…」
彼は冷えきってしまった私の身体を、優しくそっと抱きしめた。
周囲を見やると、ここは、真っ暗な森の中だ。
遠くから、狼の遠吠えのようなものも聞こえる。流されて人里離れたところにまで来てしまっていたようだった。
命が助かったと落ち着いてしまうと、麻痺していた感覚を思い出し寒さを急に感じた。
ガタガタと震える歯の根を、自分では止めることは出来ない。
冷たい水に濡れた庶民服は、肌に張り付き、体温を奪っていた。冷たい風もやんでいるとはいえない。