やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 目から涙が流れて来た。せっかく来てくれたマティアスを、ひどく傷つけたかもしれない。

 悲しい思いが、どうしても、我慢できなかった。

 ヴァレール兄さんは、私を見て顔を歪めると、大きくため息をついた。

「お前が、このまま進めろと言った縁談だ。申し込みのあった最初ならば、何か理由をつけて断れたかもしれないが、家の力が違い過ぎる。もう断れないところまで来ている……なんで嫌ならば、最初に言わなかった」

 それは……マティアスが私を裏切ったと、一方的に捨てたと思っていたから。もうあの人と結ばれることなどないと、私は思っていたから。

 それならば、誰でも一緒だと思っていたから。ジャンポールでも。誰でも。

 それなのに。

「お前はもう、婚約話が進んでいる未来の伯爵夫人なんだ。行動には気をつけろ……良いな」

 ヴァレール兄さんは、人差し指で私の額を押すと、静かに扉を閉めた。

 私はベッドに向かって走って柔らかな寝具の上に、飛び込んだ。

 確かに、私は浅はかだった。

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