アラサーだけど結婚願望ないから一人で生きていく。はずだったのに、会社の社長から結婚を申し込まれました。



彼は私を離したりしなかった。私を久しぶりに家に呼ぶと、抱きしめて離してくれなくなった。そうして、私に言うのだ。


「今まで、平塚さんより好きになった人なんていなかったんだ。だいたい俺の趣味なんかにちゃんと興味を持ってくれる人はいなくて、見るのは家柄や、肩書きや、顔がいいとか、そういうものにしか目がいかない。本当に気の合う人は、平塚さんしかいなかった。家族よりも、君の方がいいと思ってしまう。なあ、ダメなんて言うなよ……。俺は、お前がいないともう無理なんだ……」


最後の言葉は、声がかすれていて。私は必死に抱きしめ返した。この人じゃなきゃいけないと思った。私の心を揺さぶり、捕まえてくれた人……。過去のトラウマまで、溶かしてくれるような、そんな人だった。


私は顔を上げ、海堂社長を見つめた。


「……結婚しましょうか」




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