銃を持つ神は今日も僕を縛り続ける。〜拝啓 僕が捨てた貴方へ〜
序章
本当にどうしようもない夏の日だった。
戦争を除く全てが憎たらしかったんだ。
敵軍も、俺を嘲笑うように囲む陽炎、憎たらしいほど広い入道雲。そして俺を、日本を捨てた「風司」も。
彼奴は少々腹が立つが本当にかっこいい人間だった。双子として生まれ、かつて中尉として他国と戦った。確かに彼奴に戦の腕はあった。風司は俺と違ったんだ。社交的で、優しく。本当に全てが俺の上位互換だった。
幼少期から俺はどれほど彼奴と仲が良かったか。比較的裕福だったこともあり我が家では幸せに過ごすことができた。「風司、あっちになにかあるぞ!いこう!」と歳の差なんかほとんどないのに兄ぶって、俺の手を引く彼奴の暖かさ、笑顔の眩しさ、全てが脳裏に雨上がりの泥のようにへばりついて離れない。
泥といえば俺も兄も悪戯が好きだった。よく泥を家に持ち帰り母上に叩かれていた。頬が熱を帯びる感覚さえ懐かしい。他にも大量の蟷螂を連れて帰ったこともある。あの時の母の顔は米兵さえも気絶するほど恐ろしかったのを鮮明に覚えている。そんな時も俺らは2人で笑いあっていた。それなのに。
こうして俺らは無事に大人になり、日本男児として軍人となった。俺は誇りに思っていた。彼奴も喜ばしそうだった。
訓練も大変だし辛い時もあったが、全ては日本のためと思い全力で戦った。俺はまだ死なない。日本の明るい未来を見るまでは。この一心で戦った。
彼奴も最初は誇れるような笑顔を俺に向けていた。だがだんだんとその笑顔は曇っていってしまった。
どこか、俺を疑うような、窘めるような、そんな顔だった。少し不安だった。そしてその不安は的中した。
彼奴は突然何処かに消えてしまった。
俺も。母上も。彼奴が好きだった双六さえも置いて。
もしかしたら特攻兵にでもなって旅立ってしまったのかと思ったが出撃命令が出た様子もなかった。
流石に逃げたといったことはあの強い風司がないだろうと信じていた。そして、その期待は裏切られた。
彼奴は逃げたのだ。
この時から数年後、唐突に風司が帰ってきた。母上は大激怒していたが、俺は本当に嬉しかった。心の底ではまだ信じてたからだ。だがそんな思いもまた裏切られてしまった。
「俺は日本軍を辞める。戦争は間違ってる。平和のために戦いたいんだ。」
____は?何をいっているんだ、こいつは?
戦争が間違っている訳がない。戦争こそ素晴らしいものなのだから。
敬愛していた双子の兄が、非国民になって帰ってきた。
この事実に対する絶望で打ちひしがれた。
気がついた時には、俺は叫んでいた。
「ふざけるなよ、この非国民が………!!いい加減にしろ!!よく非国民が日本男児である俺や、お国のためと懸命に生きる母上の前で堂々と臓物を動かしていられるな!身の程を弁えろ!」
本当に彼奴の顔が憎たらしかった。もう2度と見たくないと誓える。
こんな昔の話を、俺は心で空に伝える。
戦争を除く全てが憎たらしかったんだ。
敵軍も、俺を嘲笑うように囲む陽炎、憎たらしいほど広い入道雲。そして俺を、日本を捨てた「風司」も。
彼奴は少々腹が立つが本当にかっこいい人間だった。双子として生まれ、かつて中尉として他国と戦った。確かに彼奴に戦の腕はあった。風司は俺と違ったんだ。社交的で、優しく。本当に全てが俺の上位互換だった。
幼少期から俺はどれほど彼奴と仲が良かったか。比較的裕福だったこともあり我が家では幸せに過ごすことができた。「風司、あっちになにかあるぞ!いこう!」と歳の差なんかほとんどないのに兄ぶって、俺の手を引く彼奴の暖かさ、笑顔の眩しさ、全てが脳裏に雨上がりの泥のようにへばりついて離れない。
泥といえば俺も兄も悪戯が好きだった。よく泥を家に持ち帰り母上に叩かれていた。頬が熱を帯びる感覚さえ懐かしい。他にも大量の蟷螂を連れて帰ったこともある。あの時の母の顔は米兵さえも気絶するほど恐ろしかったのを鮮明に覚えている。そんな時も俺らは2人で笑いあっていた。それなのに。
こうして俺らは無事に大人になり、日本男児として軍人となった。俺は誇りに思っていた。彼奴も喜ばしそうだった。
訓練も大変だし辛い時もあったが、全ては日本のためと思い全力で戦った。俺はまだ死なない。日本の明るい未来を見るまでは。この一心で戦った。
彼奴も最初は誇れるような笑顔を俺に向けていた。だがだんだんとその笑顔は曇っていってしまった。
どこか、俺を疑うような、窘めるような、そんな顔だった。少し不安だった。そしてその不安は的中した。
彼奴は突然何処かに消えてしまった。
俺も。母上も。彼奴が好きだった双六さえも置いて。
もしかしたら特攻兵にでもなって旅立ってしまったのかと思ったが出撃命令が出た様子もなかった。
流石に逃げたといったことはあの強い風司がないだろうと信じていた。そして、その期待は裏切られた。
彼奴は逃げたのだ。
この時から数年後、唐突に風司が帰ってきた。母上は大激怒していたが、俺は本当に嬉しかった。心の底ではまだ信じてたからだ。だがそんな思いもまた裏切られてしまった。
「俺は日本軍を辞める。戦争は間違ってる。平和のために戦いたいんだ。」
____は?何をいっているんだ、こいつは?
戦争が間違っている訳がない。戦争こそ素晴らしいものなのだから。
敬愛していた双子の兄が、非国民になって帰ってきた。
この事実に対する絶望で打ちひしがれた。
気がついた時には、俺は叫んでいた。
「ふざけるなよ、この非国民が………!!いい加減にしろ!!よく非国民が日本男児である俺や、お国のためと懸命に生きる母上の前で堂々と臓物を動かしていられるな!身の程を弁えろ!」
本当に彼奴の顔が憎たらしかった。もう2度と見たくないと誓える。
こんな昔の話を、俺は心で空に伝える。