【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「……これをこのまま発行したところでみんな打ち間違いだと思うはずだが、社内報は社員の家族も目を通すことが予想される。そうなると…間違った紹介をされたこの社員とその家族は嫌な思いをすると思わないか?」
たった数文字の間違いだが、社内報に載ることを事前に家族に伝えたりしていたら…配布されるのを楽しみに思ってくれているかもしれない。
私はそんな社員の思いを裏切ってしまうところだった。
「外部である取引先への発注や納品書の制作よりも、同じ会社に勤める社員に関わる仕事の方が慎重に気を配って取り組むべきだと俺は思う。仲間の信頼を失えば、この先の業務にも影響が出る」
「……本当に、申し訳ございません」
「ミスは誰にでもある。俺も入力を間違うことは未だにある。だからそれを咎めるつもりなんてない。ただ…芳野の場合少し焦りがちで、確認を怠る節がある。どれだけ時間が掛かっても構わないから、もう少し時間をかけて仕事に取り組んで欲しい」
言われたことが全て胸に刺さる。怒られている訳では無い…私のためにアドバイスをしてくれているのだとすぐに分かった。
それでも、基本甘やかされて生きてきた自分にはどれも重たいものに感じて…お前はダメな存在だと言われたような気がしてきて、情けなくも涙が溢れた。
しかし、こんな顔を晒せば”面倒なガキだ”と思われそうな気がして…必死で堪えて頭を下げる。
「これから、今まで以上に気を付けますっ…ご指導いただき…ありがとうございます」
しっかりお礼の言葉も忘れずに告げると、、
「誰だって初めは新人だ…分からないことがあれば、周りにいる人間を頼ればいい。俺も含めて」
っと、優しい言葉をくれたのでゆっくりと顔を上げると…いつものポーカーフェイスを崩し、少しだけ口角をあげている部長が視界に入り…胸がドクンッと高鳴った。
──…ぶちょー、その笑顔は反則です。