【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「……芳野…?」
「…っ、お…おかえりなさい、部長」
最近、立花さんのことで頭がいっぱいの私に余裕というものは全くなくて。こんなふうに部長が帰ってきたことにすぐに気付くことが出来ないなんてことは多々あった。
「あぁ……どうした、具合でも悪いか?」
帰宅早々、私のことを気遣ってくれる部長は今日もとても優しい。
「いえ…あの、今日も沢山ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした」
私が多少ミスをしたところで、毎回怒るのは部長という訳では無い。っというのも直属の上司と呼ばれる人が別にいるからで…
「あー…小田切《おだぎり》から聞いたよ。まぁ社会人一年目なんて失敗するのが仕事みたいなところもあるから…家に帰ってまで俺に謝罪するほどのことじゃない、気にするな」
小田切、というのは総務部で課長を務めている男性の名で…基本私に指示を出すのは彼だったりする。
しかし、口下手なのか人に注意をするのが苦手らしく…書類などでミスを見つけても直接私を叱りつけたりすることはなく自らで手直しをして後から”ここが間違っていた”と言ってくるような人だった。
余程目に余るようなミスが続けば部長に報告をするようにしているみたいで。課長経由で私のミスが部長に伝わり…毎度注意されていたのだ。