【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「それだけでっ、、なぜ…芳野さんが作ったものじゃないと言い切れるんですか?」
立ち上がって声を発した立花を見て、よくその質問をしてくれたな…と褒めてやりたくなった。
「なぜ…って。アイツに資料作りのノウハウをゼロから教えてやったのは─…俺だからだ」
そう…アイツにパソコンの触り方をゼロから教えたのは俺だ。だからグラフの作り方や資料の作成の仕方、文字の配置や余白の間隔まで……
芳野の作成する書類は怖いほど、俺の作るものとよく似ている。当然だろう…そうなるように俺が一から叩き込んできたのだから。
「芳野に限った話では無い。毎日目を通していれば、誰が作成したものか…なんて、俺にはある程度見分けることが出来る」
その発言に立花の顔色が変わったのが分かった。自分が作成したものだと気付かれていると悟ったのだろう。
「……これを誰が作成したか、なんてくだらない話しがしたくて手を止めろと頼んだ訳じゃない。ただ、気付いて欲しかったんだ。俺が居ない間、大きなトラブルもなく仕事が円滑に回っていた事は事実だが、それ以上に…大事な仲間を一人失う危機に陥っている事に、気が付いて欲しかった」
一度無くした信頼を取り戻すのは難しい。仕事に関してもそうだが、人間関係となるともっと複雑だ。少なくとも俺の部下には、仲間を傷つけて平気で笑っているような、そんな卑劣な人間で居て欲しくは無かった。