【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「会社の外に出ると、芳野は偉く頼りがいのある女性になるんだな。社内で見る不器用な芳野とはまるで別人みたいだ」
「……今は22歳一般女性、芳野沙奈ちゃんです」
「あぁ……そうだったな、悪かった」
可笑しそうに笑って、再び口を閉じた部長。そんな彼の目を見て、こちらは真剣に伝えさせてもらう。
「彼女が部長に対して、男性として残念だとか最低だとか言ってきたのは…自分と別れた後、部長がすぐに別の人と付き合ったりしないように…暗示をかけるような意味で言っただけだと思います。一種の呪い的な?」
「…呪い?そんな風に考えたことは無かったな」
「はい、呪いです。呪いだってことにしましょ」
あながち、間違いではないように思える。
もし前の彼女との間に生まれたトラブルが原因で…身体の関係を持てないまま別れてしまったのだとしたら、それはもう立派な呪いだと思う。
「……なるほど。呪いだと言われると、少し気が楽になった。」
「それは良かったです。」
「しかし、さっきから俺は一般女性に”部長”だと呼ばれてる気がするんだが…気のせいか?」
「……沙奈ちゃんの出番はお終いです。生意気なことばかり言ってしまい、申し訳ありませんでした」
ぴえん、みたいな表情を作って部長を見上げてみると、彼は優しく微笑んで私の頭の上にポン…と手を乗せる。