【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「……このまま、ドライブでもするか」
困ったように笑った部長は、未だシートベルトをしていなかった私に一瞬覆い被さるようにして…スムーズな動きでシートベルトをしめてくれた。
その際、目の前を横切った部長から…香水なのかシャンプーなのか、とてもいい匂いがして…その首元に顔を埋めてしまいたくなった。
ゆっくりと車が発進したのを合図に…私の目からポロポロと涙が零れ落ちた。運転している部長は当たり前だが前を向いているのでそれには気付かない。
「……飲み会で、何か嫌なことでもあったのか」
尋ねてきた部長の声が優しくて…涙腺をさらに刺激する。堪えきれず…ズズっと鼻を啜ったことにより…泣いていることに気が付いた様子の部長は、走行中だった車を慌てて路肩に停車させた。
「芳野、何があった……?まさか、男性社員に何か酷い扱いでもっ、」
「……私って、顔で採用されたんですか?」
焦ったような顔をしていた部長が、途端に目を丸くして…動きを止めた。