【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「私は顔採用枠で採用されただけだから…だからミスをしても誰も叱らないんですか?遅刻した時だって、みんな嫌な顔ひとつしなかったのは初めから私に期待してなかったから……?」
「……芳野、」
「……そんなのって、凄く…惨めですっ」
知りたくなかった。一人、みんなの役に立ちたいと思って勉強したり…詐欺にまであって、、本当に私は大バカだ。
「嬉しかったんです……今の会社から採用の知らせのメールが届いたときっ、やっと私を必要としてくれる会社に出会えたんだって…凄くっ、嬉しかったのに…」
嗚咽が止まらないほど、泣き出してしまった私の頭を…部長の大きな手が優しく撫でてくれる。
「……期待していない人間に、俺は仕事を任せたりしない」
部長のその言葉に、一瞬……涙が止まった。
「ミスをしても誰も叱らなかったって…?なら俺が何度もお前を呼び出して注意していたあれは、一体何だと思って聞いてたんだ?」
「……それはっ、」
「顔で採用されたって、仮にそうだとしても…そんなことは入社した時点で無効だとは思わないか?一緒に働くのは採用した人事部の人間じゃない。芳野のことを評価出来るのは、同じ部署で部長を務めている俺だけだ。他の社員の妬みを真に受ける必要は無い」
「……っ、部長」
「芳野、お前はウチの部署に必要な人間だ…それでもまだ不安に思うようなら、お前がなりたいと思う社会人に俺が育ててやるから。だからもう、くだらない事で泣くのはやめろ」
……そういえば、そうだった。
初出勤のあの日からずっと…心が折れそうになる度に、たった一人…部長だけはいつも私のことを気にかけて、よく声を掛けてくれていたっけ。
あぁ…どうしよう。弱っているメンタルに部長の言葉全てが刺さりすぎて…胸が苦しい。
もう誤魔化すことなんて出来ないよ。私は折原部長のことが…好きなんだ。上司としてはもちろんだが、それ以上に─…恋愛対象として、見てしまっている。