【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
「あの、つまり部長が私を社会人として有能な人間にしてくださるということですよね……?」
「あぁ…言い方を変えれば、そうなるな」
「だったらその見返りに、私が部長のことを有能な男性に変えても……いいですか?」
「…………なんて?」
言われたことの意味を理解するのに時間を要したのか…少し間が空いたあと困惑したような表情を浮かべた部長。
「だからっ…無能な私のことを有能な社会人にしてくれるお礼として、不能な部長のことを有能な男性にしてあげるって…言ってるんです」
偉そうな口調でこんなことが言えるのは、おそらくお酒がまだ残っているからだろう。シラフだったらこんなこと、とても言えたもんじゃない。
「……それ、意味分かって言ってる?」
私の態度にイラついたのか、冗談で言っていると捉えられてしまったのか…部長の口調も心做しか強くなったように思える。
「分かってますよ……私だって、子どもじゃないんですから」
「……何をするのか、本当に分かった上で言ってるのか?」
「だからっ…分かってるって言ってるじゃないですか!伝わってないなら、ハッキリ言わせてもらいます…部長がまたセックスを出来るように、私が例の呪いを解いてあげるって言ってるんです」
「……芳野っ?……っ、」
子ども扱い、しないで─…と伝えようと思った結果…シートベルトを外し、助手席から身を乗り出した私を見て焦っている部長の身体を座席に押し付け…無防備な彼の唇を自らの唇で塞いでしまった。