【完】同棲ギブアンドテイク〜スパダリ部長と秘密の同棲始めました〜
しばらくして、ゆっくりと身を引いて…至近距離で部長の目を見つめると……いつも向けられている視線とは違う、熱を持った目で私を見ていることに気付いて…慌てて助手席に戻った。
「……へぇ、意外と大胆なんだな…芳野は。」
カチャ…っと、部長がシートベルトを外した音が聞こえてまだ何も起きていないのに、もう既に心臓が爆発しそうな程うるさく暴れ始める。
「今のは酔った勢いってやつ?それとも、本気で俺の相手をシようと思ってる?」
酔った勢い…という言葉を否定するつもりは無いが、部長の相手をシたいと思っている気持ちの方が勝っている。
「……部長が私に色々与えてくれるのと同じように…私が自分にデキることの中で唯一部長に与えられるものがソレだから…今のキスもそのうちの一つということで…大目に見てください」
怒らせてしまったかもしれない、と今になってビビり始めた私は…考えついた言い訳を長々と述べて部長の顔色を伺う。
「─…ギブアンドテイク、ってやつか」
納得したような口ぶりでそう呟いた部長は、私の頭の上にポンッと手を乗せると─…
「朝、目が覚めて…酒が抜けた状態の芳野が俺に同じことを言えたら、その足でお前が今住んでいるマンションを出て一緒に暮らそうか?」
「……えっ…?」
「明日の朝の状態を確かめるためにも、今夜は連れて帰るけど、それでいいんだよな?─…沙奈」
突然の″沙奈呼び″に心臓が飛び跳ねて、何も言葉が出てこなかった代わりに…何度も首を縦にふって了承の意志を伝えた。
酔いなんて完全に覚めている今の私が、明日の朝記憶を飛ばしている可能性なんて限りなくゼロに近い。っとなると、これはもう─…
秘密の同棲生活、始まりの合図です。