神殺しのクロノスタシス2
では、次。

「えーと、何々…?『実技の授業をもっと増やして欲しいです』」

…あー…。

目安箱を設置する前から、度々生徒の口から聞かれる意見だ。

「んー…」

これには、シルナも即答出来ない。

「却下ですね。議論の余地なしです」

イレースなんて、一刀両断でバッサリ切り捨てた。

実技授業はなぁ…。

魔導学院に入った以上、座学なんて良いから、魔法使わせてくれよ、って。

そう思う気持ちは理解出来る。

この意見を投書したの、多分まだ低学年なんだろうな。

高学年になるにつれて、実技授業は多くなっていくから。

低学年の生徒も、実技の授業を受けたい、のは分かるんだが。

座学で魔導理論を極めてからでないと、実技に移行するのは危険だ。

その為、イーニシュフェルト魔導学院では、低学年にはあまり実技の授業を行わない。

「これなぁ…。どうしよう?高学年の実技の授業を見学する機会を与えるとか?」

「そんなことしたら、余計実技やりたくならないか?」

でもあまり締め付けて、生徒のやる気を削ぐのも…。

「こればかりは、きっぱり却下すべきです」

と、相変わらず容赦のないイレースである。

うーん…。

今回は…ってか今回も…イレースが正しいな。

設計図が分からないのに、家は建てられない。

それと同じこと。

まだ基礎を充分学んでいないのに、実技なんて行えば…どんな事故が起こるか、分かったものではない。

これには、シルナも。

「可哀想だけど…。これは、どうしようもしてあげられないね。今でも結構ギリギリだと思ってるし…」

「…だな」

生徒諸君、君達の心意気は高く買う。

しかし、高学年になるまでは、もう少し我慢して待っていてくれ。
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