神殺しのクロノスタシス2
他にも、目安箱には色々な意見が寄せられていた。

「花壇にもっと花を増やしてください。」

「学食のメニューを増やしてください。」

「学院図書室の閉館時間を遅くしてください。」

「他学年との交流の機会を設けてください。」

「制服のデザインを変えてください。」

等々。

成程、こうして見てみると、生徒達と教師の目線が大きく異なっているのが、よく分かるな。

教師が「こうした方が良いんじゃないのか」と思ってやることと。

生徒が「こうしてくれればもっと良くなるのに」と思うことは、違うのだ。

それがよく分かった。

特に、他学年との交流の機会が欲しいという意見。

これは大変参考になった。

俺達にとっては、盲点だったと言っても良い。

言われてみて、初めて気づいたからだ。

そういえばうちの学院、他学年と交流する機会って、あまりないな、と。

これは、前向きに考えても良いかもしれない。

互いに交流すれば、上級生も下級生も、得るものがあるだろう。

そんな感じで、目安箱に寄せられたたくさんの意見書を読んでいると。

「…はぇ~…」

「…」

「…」

俺とイレースは、互いに顔を見合わせた。

「殴る?」「殴りますか」の無言の会話である。

最初は勢いよく読み始めたシルナだが、後半になってくると、疲れてへばってしまっている。

歳だな。仕方ない。

「続きは明日にでも読むか…」

シルナが思い付きで始めた『目安箱推進月間』にも、一定の効果があると分かったことだし。

今日は、これくらいにしておこう。

「目安箱とシルナは、俺が片付けておくから。イレースは、校内の戸締まり、頼めるか」

「分かりました」

気がつけば、もう下校時刻もとっくに過ぎている。

そろそろ、校舎を閉めなくては。

鍵の束を持って、学院長室を出るイレースを見送り。

俺はシルナをずるずる引き摺って、隣室のベッドに放り投げた。

よし、シルナの片付けは終わり。

で、次は目安箱だ。

「…ん?」

目を通した意見書と、まだ読んでいない意見書を分けていると。

俺は、一枚の小さなメモ用紙が目に留まった。

そして、そこに書かれている一文に、戦慄した。
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