神殺しのクロノスタシス2
あんな放送で、何処の生徒が危機感を持って避難訓練に臨むものか。

お陰で、上級生なんか慣れたもの。

避難訓練だというのに、笑いながら軽い足取りで校庭に出ている始末。

それなのにシルナと来たら。

そんな生徒を叱る訳でもなく、むしろ。

「皆避難出来たね~。あ~良かった~」なんて言ってる。

こんな避難訓練に、何の意味がある?

やる意味ねぇだろ。

天下のイーニシュフェルト魔導学院の生徒ともあろう者が。

イレースに言わせれば、言語道断だそうだ。

ラミッドフルスの鬼教官が、我がイーニシュフェルトに来たからには。

もう、あんな生温い避難訓練はさせないぞ。

しかも。

「今回は、イレースの提案で、タイムアタック形式を取ることにした」

「た、タイムアタック…?」

「全学年、五分以内に校庭に集合すること。出来なかったクラスは、校庭と体育館、及び稽古場の罰掃除を課する」

「…!!」

これが、イレース直伝。

ラミッドフルス流、避難訓練だそうである。

「そんな…!それじゃ皆焦って、怪我しちゃう子が出るかもしれないよ!」

「ちなみに、焦って怪我人を出したクラスにも罰掃除を与える」

これも、ラミッドフルス流。

「酷い…!酷過ぎる!生徒が可哀想だよ!」

「これは愛の鞭って奴だ」

今までが優し過ぎたのだ。

ここいらで引き締めておかないと。

本当に、何らかの災害があったときの為にも。

避難訓練とは、本来その為にあるものじゃないか。

へらへらしながら校庭に出るイベントじゃねぇんだぞ。

「ちなみにイレースに言わせれば、五分はまだ甘いらしいぞ」

「えっ…?」

「ラミッドフルス魔導学院じゃ、三分以内が常識だったらしい。今回イーニシュフェルト魔導学院で行うのは初めてだから、容赦してあげます、とさ」

「…!」

ラミッドフルス魔導学院の避難訓練は、さながら軍隊のようだったそうだ。

イレースの訓練の成果により、彼らは大変速やかな動きで校庭に出て。

点呼を行い、「総員、揃いました!」と報告しに来たらしい。

当然、三分以内にな。

これが守れなかったクラスは、鬼教官イレースによって、鉄拳制裁が加えられたとか何とか。

…軍隊かな?

それに比べれば、五分以内なんて、イレースにとってはヌルゲーも良いところ。

余裕でクリアしてもらわなければ困ります、とのこと。

今回は、そのラミッドフルス流の避難訓練を踏襲させてもらう。

よって、シルナは除外だ。
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