神殺しのクロノスタシス2
僕達一年生にとって、避難訓練が行われるのは、入学して初めてだ。

訓練とは分かっていても、緊急放送が流れれば、緊張もする。

実は、僕も珍しく、少し緊張していた。

…クラスメイトとは、別の意味で、だけど。

しかし、不審者が侵入した、とは。

笑わせてくれるじゃないか。

もし本当に、この学院に不審者が侵入してきたとしたら。

心配しなきゃならないのは、生徒ではなく、その不審者の安否の方じゃないか?

「皆落ち着いて、静かに並んで、校庭に出よう」

クラス委員が、動揺するクラスメイトに声をかけた。

今回の避難訓練は、五分以内にクラスメイト全員が校庭に出て、点呼を終えないと、後で罰掃除を課されるらしい。

へぇ、それはそれは。

お陰で、並んで廊下に出ると、他のクラスや他学年の生徒達が、焦り気味でぞろぞろと校庭に向かっていた。

丁度良い。この喧騒に紛れれば。

悪いけれど、僕のクラスは、罰掃除決定だ。

避難訓練があると聞いてから、僕は密かに計画していたことを、実行に移すことにした。

「…さて、じゃあ行ってみましょうか」

これは、ある種の賭けではある。

だが、やってみる価値はあるだろう。
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