神殺しのクロノスタシス2
「現場」には、既にイレースが着いていた。
放送を終えてから、すぐに駆けつけたのだろう。
杖を向けて臨戦態勢であるが、しかし、攻撃は出来ずにいた。
イレースは、その性格的にも、敵とみなした相手に容赦はない。
学院に侵入し、生徒の身を脅かさんとする者に、攻撃を躊躇う彼女ではないはずだ。
それなのに、彼女は杖を持ちながら、動けないでいた。
その理由は、すぐに分かった。
「はぁ…はぁ…」
攻撃するまでもなく、敵が既に満身創痍だったからだ。
「不審者」は全身傷だらけで、藪から拾ってきたような木の棒を杖代わりに、何とか立っている有り様。
彼の通ってきた廊下には、ポタポタと血の雫が落ちていた。
魔導師でない一般人でも、簡単に捩じ伏せてしまえるのではないか。
これでは、赤子相手に杖を向けているようなもの。
イレースが躊躇うのも、無理はなかった。
「…」
シルナはその様子を見て、しばし考え。
そして。
「…イレースちゃん。生徒のケアをお願い。皆不安がってるだろうから」
静かに、イレースにそう指示した。
「ですが、学院長…」
「ここは大丈夫だから。生徒を守ってあげて」
「…分かりました」
イレースは杖を収め、身を引いた。
恐らく、また放送室に向かったのだろう。
「不審者」は確保したから、もう大丈夫だ、と生徒に伝える為に。
…で、俺とシルナは。
「…君は、誰?」
「…」
「何をしに、ここに来たの?」
「…い、けんじゃ…に」
彼は、掠れる声で答えた。
「イーニシュフェルトの…聖賢者…。シルナ・エインリーに…」
絞り出した声は、そこで途切れた。
最早限界とばかりに、彼はその場に崩れ落ちた。
「…!」
シルナは、慌ててその身体を受け止めた。
「…」
俺は、シルナと顔を見合わせた。
…これはまた、波乱の予感がするな。
放送を終えてから、すぐに駆けつけたのだろう。
杖を向けて臨戦態勢であるが、しかし、攻撃は出来ずにいた。
イレースは、その性格的にも、敵とみなした相手に容赦はない。
学院に侵入し、生徒の身を脅かさんとする者に、攻撃を躊躇う彼女ではないはずだ。
それなのに、彼女は杖を持ちながら、動けないでいた。
その理由は、すぐに分かった。
「はぁ…はぁ…」
攻撃するまでもなく、敵が既に満身創痍だったからだ。
「不審者」は全身傷だらけで、藪から拾ってきたような木の棒を杖代わりに、何とか立っている有り様。
彼の通ってきた廊下には、ポタポタと血の雫が落ちていた。
魔導師でない一般人でも、簡単に捩じ伏せてしまえるのではないか。
これでは、赤子相手に杖を向けているようなもの。
イレースが躊躇うのも、無理はなかった。
「…」
シルナはその様子を見て、しばし考え。
そして。
「…イレースちゃん。生徒のケアをお願い。皆不安がってるだろうから」
静かに、イレースにそう指示した。
「ですが、学院長…」
「ここは大丈夫だから。生徒を守ってあげて」
「…分かりました」
イレースは杖を収め、身を引いた。
恐らく、また放送室に向かったのだろう。
「不審者」は確保したから、もう大丈夫だ、と生徒に伝える為に。
…で、俺とシルナは。
「…君は、誰?」
「…」
「何をしに、ここに来たの?」
「…い、けんじゃ…に」
彼は、掠れる声で答えた。
「イーニシュフェルトの…聖賢者…。シルナ・エインリーに…」
絞り出した声は、そこで途切れた。
最早限界とばかりに、彼はその場に崩れ落ちた。
「…!」
シルナは、慌ててその身体を受け止めた。
「…」
俺は、シルナと顔を見合わせた。
…これはまた、波乱の予感がするな。