神殺しのクロノスタシス2

sideナジュ

─────…その頃、一年生の教室では。

「繰り返します。先程の火災報知器の作動は、誤作動だと判明しました。生徒の皆さんは、落ち着いて、安心してください。各クラスは、授業を再開してください」

イレース・クローリアの声が、スピーカーから繰り返し流れてきた。

…火災報知器の誤作動…ねぇ。

「これ、避難訓練じゃないんだよね?避難しなくて良いんだよね?」

「何だったんだ?今の。火事じゃないんだよな?」

クラスメイトは、騒然としていた。

避難訓練なら、先週やったばかりだが。

そもそも、この学院の四階に、魔導研究室なんてないはずだが。

「先生、大丈夫なんですよね?」

生徒の一人が、「先生」…と言う名の、シルナ・エインリーの分身に尋ねた。

すると、女性の姿を模した「先生」は、僕達生徒を安心させる為に、笑顔で答えた。

「大丈夫ですよ。イレース先生の放送の通りです。きっと、火災報知器の調子が悪かったんでしょう」

…白々しい嘘をどうも。

しかし、そんな言葉でも、生徒達は安心したようだった。

「さぁ、もう大丈夫ですよ。皆さん落ち着いて、改めて授業を再開しましょう。少し前からもう一度説明しますね」

「は、はい」

「では、教科書の36ページを開いて。そこに書いてあるように、ルーデュニア聖王国憲法に、魔導師という言葉が出てきたのは遥か昔の…」

何事もなかったように、授業を再開する様は、あっぱれ。

さすがシルナ・エインリー。

の、分身と言ったところか。

こいつを観察しても、何があったのかは分からない。

実は、この時点で僕は、何が起きたのかなど、知らないで良かったのだ。

お互いの為に、な。
< 126 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop