神殺しのクロノスタシス2

俺は、そんな中二病な名前に聞き覚えがなかったが。

シルナはどうだろう。

「…『殺戮の堕天使』…。いや、聞いたことがないね」

シルナも知らないと。

ちらりとイレースを見るが、彼女も反応していない。

イレースも知らないようだ。

「それは何かのグループの名前？それとも個人の名前？」

「…個人の名前です。…とある、魔導師の」

…そんな魔導師がいるのか？

俺もシルナもイレースも、この界隈に身を置いて長いが…そんな中二病な異名を持つ魔導師は、聞いたことがないぞ。

「僕は、その魔導師を探しています。あなたなら知っているのではないかと思って…それで、あなたを訪ねてきました」

「…そうだったんだね」

…なんだ。

シルナの命を狙ってきたのではなく…。

単なる人探しの為に…。

アホみたいに警戒していたのが、馬鹿らしいな。

「そうか…。残念ながら、君の尋ね人は知らないな…」

「…そうですか」

天音は、肩を落として落胆していた。

それもそうだろう。

あんなボロボロの姿になってまで、手掛かりを求めてイーニシュフェルト魔導学院までやって来たのに。

結局、頼みの綱のシルナからは、情報を得られなかったのだから。

「ごめんね、力になれなくて」

「いえ…。僕の方こそ、不躾に訪ねてきて…ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ないです」

天音は、ベッドの上に正座して謝った。

おい、やめろ。

そこまでされるようなことじゃない。

シルナじゃないが、力になれないのが申し訳なくなってくるじゃないか。

それよりも。

「その、『殺戮の堕天使』ってのは、何なんだ？そんなになってまで、お前は何で、そいつを探してる？」

「…」

俺がそう聞くと、天音の顔色が豹変した。

それは、思わずゾッとしてしまうほどだった。