神殺しのクロノスタシス2

side天音

─────…ここに来るまで、僕、ルーデュニア聖王国を問わず、各地を歩いて旅する魔導師だったんです。

僕が生まれたのは小さな村で、発達した医療機関はありませんでした。

でも、代わりに、魔導師がいました。

回復魔法や、光魔法が得意な老魔導師が。

僕は幼い頃、熱病にかかって死にかけたことがあって…。

そのときに、僕はその老魔導師の魔法のお陰で、命を救われました。

それがきっかけで、僕は自分も将来は魔導師になろうと思いました。

幸い、僕には魔導適性もありました。

命を助けてくれた、その老魔導師の弟子になり、魔法を勉強しました。

やがて老魔導師は寿命で亡くなり、村人は街に移って、僕の故郷の村はなくなりました。

それ以降、僕は旅に出るようになりました。

師匠に習った回復魔法で、各地を歩いては、病や怪我に苦しむ人々を救ってきました。

僕の故郷のように、医療機関が存在しない貧しい村は、いくらでもありましたから。

そんな貧しい土地で苦しんでいた人々を、無償で治療しました。

何か、見返りが欲しい訳ではありませんでした。

ただ、かつて自分がそうしてもらったように。

魔法によって、人の命を救いたかった。

それだけの思いで、各地を旅してきました。

自慢するつもりはありませんが、旅を続けているうちに、僕の回復魔法の技術は、かなり高度なものに成長していきました。

いくつかの国では、聖魔騎士団魔導部隊のような、魔導師部隊に所属しないかと持ちかけられたこともありました。

自分の国の軍隊つきの魔導医師になって欲しいと、頭を下げられたこともあります。

特別な待遇を約束するからと、目の前に金を積まれたこともあります。

だけど、僕はそれらを全て断ってきました。

僕は何処かに所属するより、誰にも引き留められず、自分のやりたいことを…やるべきことをやりたかったんです。

それはつまり、今も何処かで苦しんでいるであろう、誰かを救うことでした。

と言うより、何処かに所属して、責任を負うのが嫌だったんです。

それに何より…僕は、戦いが嫌いでした。

魔法を戦いに使うことが、どうしても嫌だったんです。
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