神殺しのクロノスタシス2
それから僕は、しばらくその村に滞在することになりました。

いつもなら、怪我人や病人を治したら、長居はせず、すぐに立ち去るのですが。

一人娘を救ってくれた僕を、村長が離してくれなかったのです。

どうか礼をさせてくれ、と。

他の村人達も同様でした。

すぐ立ち去るなんてとんでもない。しばらく村でもてなしをさせてくれと頼んできました。

その村は元々、余所者だろうが、肌の色が違おうが、客人というだけで、最高級のもてなしをするのが礼儀、という習慣があったそうです。

おまけに僕は、死にかけていた村長の娘を救ってくれた恩人。

何のもてなしもせずに村から放り出すなど、先祖に申し訳が立たない。とまで言われました。

故に、僕は村人の好意に甘え、しばらく村に滞在することにしました。

思えば、あれが間違いだったのかもしれません。

あのとき、無理にでも村人の制止を振り切って、村を出ていれば…。

あんなことには、ならなかったのかもしれない。
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