神殺しのクロノスタシス2

side羽久

─────…何も言わずに、俺達は天音の話を聞いていた。

「…目を覚ましたのは、あの虐殺から何日もたった頃でした」

憤怒に震えながら、天音は語った。

「あいつは、僕を殺したつもりだったんでしょう。でも僕は回復魔法が得意で、自身も回復力に特化していた為に…かろうじて、死なずに済みました」

…それは何より。

これが他の人間だったなら、まず助からなかっただろうな。

よく生きてたもんだ。

「何とか村を回って、一人でも生き残っている者がいないか探しましたが…」

「…」

天音は、無言で首を振った。

一人残らず、殺戮者の手に落ちたのか。

天音の言う通り、そいつは悪魔だな。

「僕は許せなかった。どうしても、どうしても許せなかったんです。罪のない人を、無慈悲に殺したあの悪魔が…」

「…」

「絶対に、絶対に許せない。だから…王都に来ました。シルナ・エインリー…あのイーニシュフェルトの聖賢者なら、『殺戮の堕天使』を知っているかもしれないと思って」

…それで。

それが、天音がイーニシュフェルト魔導学院に来た理由。

身体の傷も癒えず、魔力も回復していないのに。

一刻も早く、村人の仇を討つ為に…。

しかし…。

頼みの綱は、残念ながら何の情報も持っていない。

我が相棒ながら、向こう脛蹴っ飛ばしてやりたかった。

お前、無駄に長生きしてるんだからさ。

『殺戮の堕天使』なんていう、中二病感満載の異名を持つ魔導師くらい、知っとけ。

健気にも、こんなところまで来てくれたのに。

全く無意味だったなんて…。
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