神殺しのクロノスタシス2
天音がいる手前、こんな話はしたくないというのが本意だが。
こればかりは、見過ごせない。
その『殺戮の堕天使』とやら、一体何の目的があって、村人を殺害したのだ?
普通、村を襲う理由…色々あるとは思うが。
魔導師というものは、普通に生きていれば、食うに困るってことはない。
食う必要がない訳だから。
昔の部族戦争みたいに、相手の土地が欲しくて襲った…とは考えにくい。
「略奪…が目的だった訳じゃないんだよね」
「はい…。彼が何かを盗む様子はありませんでした。それに…あの村に、盗むものなんて…」
…ないわな。
焚き火組んで、畑で野菜育ててるような、原始的な村に。
売れば金になる貴金属ががっぽり、とは考えにくい。
それに、本当に略奪が目的なら、皆殺しにする必要はない。
むしろ、住人を人質に取って、有り金全部出せ、と脅した方が効果的だ。
なら、考えられる目的は…。
「…多分、だけど…」
シルナは、言いにくそうに…しかし、確かに口にした。
「…君が、目的だったんだろうね」
「…僕も、そう思います」
天音も、否定せずに頷いた。
『殺戮の堕天使』の目的は、金でも、土地でも、村人の命でもない。
村で匿われていた、天音という魔導師。
天音に会うことが、『殺戮の堕天使』の目的だったのだ。
そして、天音を自分の前に引っ立てる為に、村人の首を…。
…なんて、汚いやり口だ。
天音に会いたいなら、天音に会いたいと、堂々と会いに来れば良いじゃないか。
何故、罪のない村人を殺す必要があったのだ。
天音の言う通り、そいつはとんでもない悪魔だ。
「本人も、僕に会うのが目的だったというようなことを言ってましたから…」
「…」
『優秀な魔導師がいると聞いて来た。』
『歯応えがあると思っていたのに残念だ。』
これらの発言を鑑みるに。
『殺戮の堕天使』の目的は、魔導師としての天音に会うこと。
しかも、この言い方じゃ…まるで、天音を試そうとでもしていたかのようじゃないか。
そして、一通り試して、期待外れだとばかりに天音を見捨て…。
…何故、そんなことを。
「…僕が、あの村に長く留まってしまったが為に…村人を巻き込んでしまって…」
天音は、悔しそうに両手の拳を握り締めた。
…天音にとっては、やりきれない思いだろう。
自分が村人の好意に甘え、長居してしまったから…天音という魔導師が村にいることがバレた。
『殺戮の堕天使』が、天音の存在を聞き付けたのだ。
だが、それは…あくまで結果論でしかない。
「…君のせいじゃないよ、天音君」
シルナが、天音の肩に手を置いた。
「憎むべきは、その『殺戮の堕天使』だ。君は命を救い、救おうとしただけ。殺された人達は、君に感謝こそすれ、憎みなんてしてない」
「…シルナ・エインリーさん…」
「私はそう思うよ」
「…」
天音は、力なく頷いた。
…そうか。
そんな経緯で、あんなぼろぼろの姿になって、イーニシュフェルトに…。
「もし『殺戮の堕天使』が、ルーデュニア聖王国に潜り込んでいるのなら…。私達は、無視出来ない」
『殺戮の堕天使』などという、危険極まりない魔導師。
野放しにしておけば、また何をしでかすことか。
「すぐに、聖魔騎士団に連絡しよう。危険人物として、捜索を…」
「…シルナ・エインリーさん」
天音は、はっきりとシルナの方を見て言った。
こればかりは、見過ごせない。
その『殺戮の堕天使』とやら、一体何の目的があって、村人を殺害したのだ?
普通、村を襲う理由…色々あるとは思うが。
魔導師というものは、普通に生きていれば、食うに困るってことはない。
食う必要がない訳だから。
昔の部族戦争みたいに、相手の土地が欲しくて襲った…とは考えにくい。
「略奪…が目的だった訳じゃないんだよね」
「はい…。彼が何かを盗む様子はありませんでした。それに…あの村に、盗むものなんて…」
…ないわな。
焚き火組んで、畑で野菜育ててるような、原始的な村に。
売れば金になる貴金属ががっぽり、とは考えにくい。
それに、本当に略奪が目的なら、皆殺しにする必要はない。
むしろ、住人を人質に取って、有り金全部出せ、と脅した方が効果的だ。
なら、考えられる目的は…。
「…多分、だけど…」
シルナは、言いにくそうに…しかし、確かに口にした。
「…君が、目的だったんだろうね」
「…僕も、そう思います」
天音も、否定せずに頷いた。
『殺戮の堕天使』の目的は、金でも、土地でも、村人の命でもない。
村で匿われていた、天音という魔導師。
天音に会うことが、『殺戮の堕天使』の目的だったのだ。
そして、天音を自分の前に引っ立てる為に、村人の首を…。
…なんて、汚いやり口だ。
天音に会いたいなら、天音に会いたいと、堂々と会いに来れば良いじゃないか。
何故、罪のない村人を殺す必要があったのだ。
天音の言う通り、そいつはとんでもない悪魔だ。
「本人も、僕に会うのが目的だったというようなことを言ってましたから…」
「…」
『優秀な魔導師がいると聞いて来た。』
『歯応えがあると思っていたのに残念だ。』
これらの発言を鑑みるに。
『殺戮の堕天使』の目的は、魔導師としての天音に会うこと。
しかも、この言い方じゃ…まるで、天音を試そうとでもしていたかのようじゃないか。
そして、一通り試して、期待外れだとばかりに天音を見捨て…。
…何故、そんなことを。
「…僕が、あの村に長く留まってしまったが為に…村人を巻き込んでしまって…」
天音は、悔しそうに両手の拳を握り締めた。
…天音にとっては、やりきれない思いだろう。
自分が村人の好意に甘え、長居してしまったから…天音という魔導師が村にいることがバレた。
『殺戮の堕天使』が、天音の存在を聞き付けたのだ。
だが、それは…あくまで結果論でしかない。
「…君のせいじゃないよ、天音君」
シルナが、天音の肩に手を置いた。
「憎むべきは、その『殺戮の堕天使』だ。君は命を救い、救おうとしただけ。殺された人達は、君に感謝こそすれ、憎みなんてしてない」
「…シルナ・エインリーさん…」
「私はそう思うよ」
「…」
天音は、力なく頷いた。
…そうか。
そんな経緯で、あんなぼろぼろの姿になって、イーニシュフェルトに…。
「もし『殺戮の堕天使』が、ルーデュニア聖王国に潜り込んでいるのなら…。私達は、無視出来ない」
『殺戮の堕天使』などという、危険極まりない魔導師。
野放しにしておけば、また何をしでかすことか。
「すぐに、聖魔騎士団に連絡しよう。危険人物として、捜索を…」
「…シルナ・エインリーさん」
天音は、はっきりとシルナの方を見て言った。