神殺しのクロノスタシス2
「運動会だ~!やったー!運動会~♪」

「…」

「…」

「わーい運動会~!楽しみだなぁ~♪」

るんるんと、鼻唄混じりにスキップで喜びを表現するシルナ・エインリー学院長。

「…ねぇ、羽久さん」

「…何だ。イレース」

「これ、黒焦げにして良いですか?」

スッ、と杖を出すイレース。

「あぁ…。良いと思うぞ」

もう、何の容赦もなく、丸焦げの焦げにして良いと思う。

学院長の炭火焼き。売ろうぜ。

「では、遠慮なく」

バリッ、とイレースの杖から雷が迸った。

「ぴきゃぁぁぁぁっ!?」

間一髪。

シルナは、イレース渾身の雷魔法を避けた。

ちっ。避けやがった。

「ちっ。避けやがった」

イレースも同じこと言ってる。

「ちょ、いきなり何するのイレースちゃん!?」

「ちょっと学院長を丸焼きにしようかと…」

「ちょっと感覚で丸焼きにしないで!死ぬから!イレースちゃんの雷魔法は死ぬから!」

まぁ、痛いくらいじゃ済まされないよな。

何せ彼女は、元ラミッドフルスの鬼教官なのだから。

「何でそんな酷いことするの!?怖いからやめて!」

被害者面をするな。

むしろ、朝から気持ち悪いくらいるんるんしてるシルナを見せられた、俺達の方が被害者だ。

中年のおっさんが、鼻唄歌いながら、頭の中お花畑満載で、部屋をスキップしてるんだぞ。

その姿は最早、害悪以外の何物でもない。

「羽久さん、何なんですかこれは。何があって、またこんな気持ち悪いことになってるんです」

「イレースちゃん酷い!これじゃないよ、シルナだよ!あと気持ち悪くもないもん!普通だもん!」

シルナの戯言は無視するとして。

イレースの疑問は、もっともである。

今年入学してきた生徒達も、今のシルナの姿を見たら、今からでも転校を考えるのではなかろうか。

それくらい、情けない姿だ。

しかし、実はこれ、毎年恒例。

俺は、毎年これを見せられてるからな。

何とかしてくれよ。マジで。

…で、何でこうなってるのか、だったな。

その質問に答えねばなるまい。

「本人も言ってただろ。運動会だよ」

「運動会…?」

「今月末にあるだろ?運動会」

「…」

それが楽しみで楽しみで、仕方ないんだよ。この学院長先生は。
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