神殺しのクロノスタシス2
ルーデュニア聖王国において、高等教育での体育祭、運動会と呼ばれるイベントは、強制ではない。

つまり、やりたくなきゃ、やらなくても良いってこと。

各学校のご自由に、ってなもんだ。

まぁ、大抵の学校にはある。

一般の、普通科の高校には、な。

しかし魔導学院となると、話は違う。

イレースの言う通りなのだ。

魔導学院は、将来聖魔騎士団魔導部隊に所属する魔導師を養成する学校であり。

運動会なんて、一般の学校で行われるイベントなんて、無理に行う必要はない。

そもそも魔導師に、体術はさして必要ないし。

ひとえに運動会と言っても、チーム分けやら、競技決めやら、練習やらで時間を食い。

当日だって、父兄の誘導や来賓の接待など、やることは山積み。

生々しい話をすると、当然、それなりのお金も動く。

無料で出来る訳じゃないからな。

学院の勘定を担うイレースにしてみれば、「余計な出費」以外の何物でもない。

「運動会なんて必要ありません。その間に、授業を進めるべきです」

イレース、一刀両断である。

さすが。相変わらず容赦がない。

「そんな!イーニシュフェルトは毎年運動会をやってるんだよ!走ったり跳んだり踊ったり…」

「笑止。魔導師に全く必要ありません。それより、一つでも多くの魔導理論を頭に叩き込むことの方が重要です」

「ひ、酷い…!頑張ってる皆の姿を見て、『あぁ青春だな~』ってほっこりしながらお菓子を食べるのが、私の一年の楽しみの一つなのに…!」

お前の楽しみかよ。

生徒の楽しみじゃなくてか。

「それに、今年は既に学院長の浪費のせいで、予算も多くありませんし。これ以上の余計な出費は…」

さすがイレース。財布の紐が固い。

しかし。

「嫌だ!運動会やる!見たい!運動会見たい!みーたーいー!やるったらやるんだー!運動会~!」

「…」

「…」

…皆さん。ご覧下さい。

これが、運動会をやりたいと駄々をこねる学院長(中年のおっさん)です。

デパートで玩具を強請る子供か、お前は。

見苦しいことこの上ないから、やっぱりイレースに黒焦げにしてもらおうかな。
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