神殺しのクロノスタシス2
さて、まずは最初の競技。

運動会のド定番、徒競走である。

小学生じゃあるまいに、何でこんな競技を毎年毎年、全学年でやらされなければならないのか。

と、疑問に思う生徒もいるだろう。

その答えは、ここにある。

この、学院長席に。

「カナエちゃーん!頑張れー!アニーちゃんファイトー!シャーロットちゃーん!負けるなー!」

「…」

お手製のうちわを、ぶんぶん振りながら。

シルナは、競技を行う生徒達を応援していた。

間違いなく、保護者より熱心に応援してるぞ。

しかも、このシルナ。

無駄に声が大きいので、応援される生徒達にも聞こえている。

彼らは、名指しで応援されるのが恥ずかしいらしく(当たり前)。

全員、顔を真っ赤にして走っていた。

むしろ足がもつれて転ぶよなぁ。

シルナがうるせぇ。

しかも。

「よし次!次はエリザベスちゃんと…あれっ、エリザベスちゃんの応援うちわは!?」

全校生徒分の応援うちわがあるのだから、該当生徒のうちわを探すのも大変である。

次のグループが、位置についてー、と白線まで出た。

おい、もう始まるぞ。

「羽久!羽久!エリザベスちゃんのうちわ何処!?」

「知らねぇよ…」

「良いから早く探して!もう始まっちゃうよ!」

なんて段取りの悪い学院長だ。

仕方ないので、生徒の応援うちわが詰まった段ボール箱を探る。

エリザベス、エリザベス…あ。

「あるじゃん、ここに」

エリザベス、ってキラキラテープで名前書いてる。

しかし。

「それは四年生のエリザベスちゃんの分!今探してるのは一年生のエリザベスちゃん!」

もうどっちでも良いじゃないかよ。

名前同じなんだから。

そうこうしているうちに、ピストルが鳴る。

「あぁっ!始まっちゃった!」

こうなると、もう段ボール箱を漁っている暇はない。

ならば次の手段とばかりに、シルナはタオルを手に、それをぶんぶん振り回した。

「頑張れー!エリザベスちゃーん!ファイトー!」

ライブ会場か。ここは。

応援される方の身にもなってみろ。

恥ずかしくて、逆に全力出せないよな。
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