神殺しのクロノスタシス2

sideシルナ

──────…その頃。観客席では。

「皆楽しそうだな~…」

私は、わくわくしながらグラウンドを眺めていた。

勿論、応援うちわを持って。

メインイベントは終わったが、まだ運動会は終わっていない。

今は、借り物競争だ。

何かしらのお題を出された生徒達は、それぞれ観客用テントや、生徒のテントを回って探していた。

お題って、どんなものなんだろう。

今年の借り物競争のお題は、イレースちゃんと羽久が決めてくれた。

二人は、どんなお題を出したんだろうなぁ。

誰が一番にゴールするかな。

うちわを振りながら、わくわくと待っていると。

「…学院長!」

「うわっ!」

いきなり背後から呼び掛けられて、私は飛び上がった。

慌てて振り向くと、一年生の生徒…名前は確か、ナジュ君…が立っていた。

びっくりした。

この子、全然気配を感じなかった。

「ど、どうしたの?」

「ちょっと、一緒に来てください」

「えっ、えっ」

「学院長の力が必要なんです!」

「そ、そうなの!?よ、よく分かんないけど…。ついていけば良いんだね?」

「はい、お願いします」

あぁ、成程分かった。

この子のお題、多分『学院長と一緒にゴールする』なんだ。

だから私の力が必要だと。

成程成程。

生徒の為だ。私も、一肌脱ぐとしよう。

ナジュ君と一緒にグラウンドに出て、羽久の待つゴールに向かう。

すると。

「あ?お前何でいるの」

私の姿を見るなり、羽久のこの暴言。

悪かったね。いて。

「ナジュ君に呼ばれたの」

「ふーん…。じゃ、お題の紙見せて」

「はい」

ナジュ君は、お題を書いた紙を羽久に手渡した。

中には、『学院長と一緒にゴールする』と…。

「えーっと…。『ハゲたおじさんと一緒にゴールする』」

え?

羽久…今何て?

「イケると思ったんですけど、駄目ですか?グラスフィア先生」

「いや、OK。クリアだよ。一位ゴールおめでとう」

「ありがとうございます!」

「ちょ、ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってー!」

何だか今、物凄く聞き捨てならないことを聞いた気がするんだけど?
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