神殺しのクロノスタシス2
「あぅ~…」

「…」

ぐでーん、と観客席のテーブルに突っ伏して、覇気のない学院長シルナ・エインリー。

俺は無視しておこうと思ったのだが。

「そこ、邪魔です」

イレースは、容赦なかった。

イレースは半ば強引にシルナを蹴っ飛ばし、パイプ椅子やテーブルを、てきぱき片付けていた。

偉い。イレース。お前は偉いぞ。

それに比べて、この役立たずのハゲおっさんは何だ。

「お前も片付けろよ。分身出せるだろ」

何一人でサボってるんだ。

「だぁってぇ…」

「あ?」

「いつになく、生徒達が可哀想で…」

「…」

…それは、まぁ。

確かに、今年はちょっと可哀想だったかもしれない。

勝利した黄チームは良いとして。

青チームは、ほんの二点という僅差で、優勝を逃した。

赤チームなんて、優勝争いに食い込めてすらいない点数。

ここまで極端なのは珍しい。

青チームと赤チームの生徒が、それぞれ別の意味で可哀想。

でも。

「しょうがないだろ。今回はそうなる運命だったんだよ」

もう一回やってみろ。

今度は、また別の結果になるぞ。

「あぁ。負けた生徒達の、あの可哀想な顔…。やっぱり、皆優勝にしてあげれば良かった…」

「…」

それはそれで、可哀想じゃないか?

「…良いから、早く片付け手伝えよ」

「…血も涙もないね…君は…」

悪かったな。





こうして、今年もイーニシュフェルト魔導学院の運動会は、無事に終了したのだった。





< 184 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop