神殺しのクロノスタシス2
シルナは、顔を真っ青にして、ぶるぶる震えていた。

皆さん、ご覧ください。

イーニシュフェルト魔導学院の学院長が、学校の七不思議にびびってる様を見られるのは、今だけですよ。

「ほ、本当なのかな…?本当にそんな心霊現象が…」

「知らないよ…」

確かめた訳じゃないんだから。

あくまで噂だ。信じたければ信じれば良いが、信じたくないなら信じる必要はない。

と言うか、俺はどうでも良い。

生徒や俺達に実害がないなら、放っておいても良いだろう。

と、俺は思うのだが。

シルナは、そうでもないらしく。

「これは大変なことだよ!もし本当に幽霊が出るんなら、何とかしなきゃ!」

何とかって…。

「…何?霊媒師でも呼ぶの?」

「私や生徒や私が襲われたらどうするの!?今すぐ、何とかしないと!」

自分が犠牲になるのが嫌だってことは、よく分かった。

すると、そこに。

「学院長。これ、午後に届いた郵便物…。…何ですか、そのいつにも増した間抜け顔は」

イレース、容赦なし。

シルナはイレースにすがりつきながら、涙目で訴えた。

「大変なんだよイレースちゃん!」

「何がですか」

「私の学院にね、七不思議が!幽霊が出るって噂があるんだって!生徒の間で話題になってるって!」

と、必死に訴えるも。

イレースの、この白けた顔。

絶対今、「どうでも良い…」と思ってるだろうな。

「どうでも良い…」

ほらな。

「そんなことより、郵便物を」

「そんなこと!?学院に幽霊が出るんだよ!?階段が増えるんだよ!?大変なことじゃないか!」

「はいはいそうですね。良いじゃないですか階段一つくらい。どうせ気づきませんよ」

タフだなー、イレース。

まぁ、人間、いちいち階段の数なんて、数えながら登り降りすることはないからな。

一つくらい増えたり減ったりしたところで、多分気づかない。

「一体何の騒ぎなんですか、これは。この馬鹿な学院長は、今日は何に喚いてるんですか」

イレースは、俺に向かって尋ねた。

本当。何に喚いてるんだろうな、こいつ。

「生徒が言ってたんだよ。イーニシュフェルトに、学校の七不思議があるって…」

「…」

「で、それを真に受けて、こうなってる」

俺は、ぶるぶる震えているシルナを指差した。

イレースはしばし無言で、そして。

冷たくシルナを見下ろし。

「…頭の中、スポンジでも詰まってるんですか?」

「イレースちゃんが酷い!」

正論だイレース。もっと言ってやれ。
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