神殺しのクロノスタシス2
「あぅ…。怖い…」

「まだ玄関だぞ…」

今びびっててどうする。

俺は懐中電灯を片手に、校舎の中に入った。

シルナは、いつぞやのお化け屋敷のように、俺の腕をしっかりと組んで離さなかった。

何が嬉しくて、おっさんにくっつかれなきゃならない訳?

今、あの定番の悪戯やったらウケるだろうな。

ほら、真っ暗闇の中で、懐中電灯で自分の顔を照らして、うらめしや~って奴。

でも、今それをやったら、シルナは間違いなく卒倒する。

ので、まぁ容赦してやるとするか。

それより、この探索作業をさっさと終わらせたい。

シルナで遊んでる暇はないんだ。

「えーと、確か一つ目は…二階の西階段だったっけ」

「ちょ、ちょっと待って。そんな早足で。まだ心の準備。心の準備が!」

「早くついてこないと、置いてくぞ」

「酷い!」

何が心の準備だ。

そんなものするから、余計緊張するんだろ。

俺とシルナは、二階の西階段、例の…一段多くなっているという階段にやって来た。

ここだよな?

「いる?羽久…。いる?」

俺の背中にぴったりくっついて、ぶるぶる震えるシルナ。

いるって聞かれても…。

「ただの…普通の階段にしか見えないんだけど…」

そもそも俺。

普段の階段の数、知らないんだよ。

だから、増えてようと減ってようと、違いが分からない。

「ちょっと上ってみるか」

「えぇぇ!何で!怖いよ!」

「じゃあ、シルナは来なくて良いよ」

俺が確かめてくるから。

しかし。

「やだ!一人にしないで!」

我が儘か。

結局、シルナは俺の背中をがっちり掴んだまま、一緒に階段を上った。

一番上まで上がってみたけど。

…うん。

「何もないじゃん」

「うぅ…」

何にびびってるんだ、この学院長は。

一段増えてようが減ってようが、三階に行き来出来るなら、どうでも良いよ。

「あー下らね。はい次、次。図書室の本がどうって奴、確かめに行くぞ」

「あぅ~…」

全く、お化け屋敷の再来かよ。
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