神殺しのクロノスタシス2

side羽久

──────…図書室に潜む何者かの存在に、気づくことなく。

三番目の七不思議、美術室に向かった。

さて、確かこの美術室には。

目が光ってる、大昔の音楽家の肖像画があるとか何とか。

本当か?

「…光ってる…?ねぇ、光ってる…?」

「…お前は何をびびってるんだよ…」

シルナは、ぶるぶるしながら美術室の入り口から、そっと中を覗いていた。

入ってこいよ。何びびってんだ。

まぁ良い。シルナは放置だ。

「光ってる肖像画ねぇ…」

懐中電灯で、美術室に飾ってある絵画の数々を照らす。

飾ってあるのは、音楽家の肖像画だけではない。

他にも、美術部の生徒が書いたであろう、風景画や。

まだ描きかけの、イーゼルに放置されている絵もある。

その一つ一つを、懐中電灯で照らす。

が、何か変わった様子はない。

そもそも真っ暗闇なんだから、光っているものがあれば分かるはず。

ってか、音楽家の肖像画ってどれだ。

人物画だよな?

「光ってる?光ってる?」

「別に何も光ってないけど…。ん?」

「え?」

「何だ、あれ」

薄ぼんやりとした暗闇の中に、赤や紫などの、濃い色が見えた気がした。

その方向に、俺は懐中電灯を照らした。

すると。

「ひきゃぁぁぁ!?」

びっくりするから、いちいち悲鳴をあげるな。

だが、その気持ちは分かる。

これは、初見でびびる。

その絵は、所謂抽象画である。

ムンクが叫んでる感じの。

赤とか紫とか黒とかの、目立つはっきりとした派手な色彩を、豊かに表現している。

…と言えば聞こえは良いが。

これ…あれだ。

美術館素人あるある。

「これの何が凄いの?」って思う奴。

あるいは、「これくらいなら自分で書けるじゃん」って奴。

「助けて羽久~!」

助けを求めて、しがみついてくるシルナ。うぜぇ。

「襲われてもないのに、どうやって助けるんだよ」

「だ、だってあの絵、見るからに危ない…」

「そういう絵なんだよ。きっと」

俺達には芸術センスがないから、分からないだけで。

見る人が見れば、高尚な絵に見えるのだろう。

…多分。
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